学区制度と学校選択制のメリット・デメリット
一般的に住む住所により通学する小学校、中学校は決められていて、通学区域や学区、校区と呼ばれます。
しかし、2002年の東京都品川区をかわきりに全国規模で学校選択制を採用する地域が増えています。(全国的には2000年の三重県紀宝町が初めての導入)
学区制度と学校選択制についてはどちらもメリット・デメリットがあり、どちらがお子さんにとって最適かは地域や学校、家庭等様々な要素が関わるため一概には言えません。
全国規模のアンケートで60%以上の保護者が学校選択制に賛成というデータもありますが、学区制度と学校選択制について比較しながら概要を詳しく見ていきましょう。
学区制度とは?
学区制度とは、住んでいる町名番地により通学する小学校、中学校が決められています。
学区割については地方ごとに異なり、役所にて確認することが出来ます。
古くからの学区を人口や世帯の増加と共に統廃校や開校を経ているため、学区割が複雑な地域なども少なくありません。
学区制度は基本的に決められた学校に通学しますが、特例により学区外通学も認められています。学区外通学規則も地域により異なりますが、以下のような条件を掲げている地域が多いです。
- 身体的理由による場合
- 保護者の勤務地による場合
- 学童保育施設を利用する場合
- 住居予定移転地へ予め通学する場合
- 地理的理由による場合
- その他やむを得ない事由
上記の項目を見てわかるように、学区制度であっても様々な理由で子どもの通学に支障をきたす場合は、学区外通学が認められるケースが多いので学区外通学を希望する場合は役所に問い合わせて可能かどうか確認するようにしましょう。
家造ネットの地域学区ガイドでは、東海・関西エリアの小中学校の通学区域を地図付きで掲載していますので参考にしてみてください。
学校選択制とは?
学校選択制とは、住んでいる住所に関わらず市町村内の学校を選択出来る制度のことです。
ただ、学校選択制にも種類があり、必ずしも市町村内全ての小中学校を選択できるわけではありません。
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自由選択制
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市区町村のすべての学校のうち、希望する学校に就学できる
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ブロック選択制
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市区町村をブロックに分け、そのブロック内で自由に選べる
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隣接区域選択制
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隣接する区域内の希望する学校に就学できる
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特認校制
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特定の学校について、通学区域に関係なく就学できる
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特定地域選択制
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特定地域に居住するものについて、学校選択を認められる
引用元-教セミ.com
大まかに上記のような項目で学校選択制の種類は分かれますが、これらの中でも地域により掘り下げて決まりことがあります。
学校選択制の先駆けとなった東京都では、23区の中でも自由選択制やブロック選択制など区により採用されている制度が異なります。
人口と学区制度、学校選択制
東京都で大々的に広まった学校選択制ですが、全国的に人口の多い市町村で見ると導入されているのは東京都以外に大阪市だけです。
公共交通機関の充実している都市部以外は完全な学校選択制は難しいとも言われていますが、都市部でも導入しているところがまだまだ少ないのがよく分かります。
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東京都
約1300万人 -
千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、渋谷区、杉並区、豊島区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区、八王子市、立川市、青梅市、調布市、町田市、日野市、国分寺市、清瀬市、武蔵村山市、多摩市、西東京市
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横浜市
約370万人 -
学区制度
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大阪市
約270万人 -
北区、都島区、福島区、此花区、中央区、西区、港区、大正区、天王寺区、西淀川区、淀川区、東淀川区、東成区、生野区、旭区、城東区、鶴見区、阿倍野区、住之江区、住吉区、東住吉区、平野区、西成区
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名古屋市
約230万人 -
学区制度
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札幌市
約200万人 -
学区制度
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福岡市
約150万人 -
学区制度
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川崎市
約150万人 -
学区制度
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さいたま市
約130万人 -
学区制度
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広島市
約120万人 -
学区制度
学校選択制を多く導入している都道府県(小学校)
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鹿児島県
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25市町村
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北海道
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21市町村
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東京都
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20市町村
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埼玉県
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13市町村
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福岡県
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10市町村
地域的に見てみると全国的に偏りなく導入されている印象です。
北海道や埼玉県では主要都市以外に多いというのが人口データと照らし合わせると分かります。
学区制度のメリット・デメリット
学区制度の最大のメリットは、地域との連携が挙げられます。
昨今ではよく見かけるようになった、交差点での交通誘導やボランティアによる学校行事への家族を含めた地域住民の参加は、学区制度による大きなメリットと言えるでしょう。
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逆に最大のデメリットは、決められた学区により一番近い学校に通えないケースがあるといったところにあります。
基本的に学区は、学校周辺を均一の距離で通学できるようにつくられていますが、土地の形状や交通事情、世帯数など様々な要因で歪なカタチになってしまうことも少なくありません。
それにより、A校に20分かけて徒歩で通学しているけれどもB校なら10分で通学できるといったケースも多々あります。
学校選択制のメリット・デメリット
学校選択制度の大きなメリットとしてお子さんに合った教育の学校を選べるといった点が挙げられます。
学校選択制が採用されるきっかけともなった教育内容の向上の背景もプラスとなりお子さんにより実りのある教育をと思うのは親心なら当然と言えるでしょう。
ただ、気を付けたいのは学校は選べてもクラスや先生は選べないといった点です。友人間や先生目当てで学校を選択しても同じクラスになれなかったり担任につかないといったことは十二分にありえます。
また、どの学校の教育がいいという明確な指標はなく、学校説明会や評判を頼りにするしかありません。
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大分県小学校英語教育推進研修
デメリットを考えてみると、通学距離が伸びた場合によるリスクが最も心配なところでしょう。地域により徒歩圏内のみといった決まりがあるケースもありますが、通学距離が長くなれば長くなった分だけ事故や事件に巻き込まれる可能性は高くなります。
また、学校選択制であっても定員人数が決められていて、満員になれば決められた順番と抽選になります。
地域や兄弟の有無など決められた順番は地方により異なりますが、必ずしも選択した学校に通学できるわけではありません。
それ以外では、中学校に限り部活動への影響はとても大きいと言えます。小学校時代に学校以外の地域クラブ活動で一緒になった選手たちが学区を超えて一つの中学校に集まるといったことも学校選択制であれば可能です。
中学校の部活にやりたいものがないというケースもあるので、部活動の面ではメリットが大きいと言えるでしょう。
学区制度と学校選択制の比較
- 比較項目
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学区制
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選択制
- 通学
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基本的に近い学校
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公共交通機関を利用して通学することも
- 教育
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教育方針を選択できない
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お子さんに合った教育方針の学校へ通学できる
- 地域
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地域に根付いた教育の推進
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地域と連携しにくくなる
- 保護者
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学校の教育方針に従う
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学校の教育方針を理解し選択する
- 学費
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変わらない
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変わらない
- 部活
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学校にある部活に入部
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強豪校も選択可能
- 先生
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選択出来ない
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選択出来ない
学校選択制の見直し・廃止
2000年から全国規模で導入されてきた学校選択制ですが、20年近くを経て見直しや廃止になっている市町村もあります。
一番の理由は通学距離によるもので、規模を縮小したり通学距離に上限を設けるなど見直す地域が多いです。
廃止になるケースの理由として大きいのは学校間の生徒数のバラつきが問題視されています。
選択制を導入する際も100%の世帯が賛成したわけではありませんが、廃止に伴って指定外通学の緩和など役所の対応にも注目が集まります。
学区制度が導入された1941年から約60年経って導入された学校選択制。
約20年でメリット・デメリットも明確になってきているので子どもにとってベターな選択が出来るよう今後見直し、廃止を含めた制度の検討が各地方で期待されます。
最後に
学区制度と学校選択制について様々な項目を見てきましたが、冒頭にも書いたようにどちらが優れているかは一概には言えません。
学校選択制のデメリットを解消できるのであれば、選択制を優位に考えますが、全てをクリアーすることが難しいため規模の縮小や廃止も増えています。
それでも、教育内容の向上が見込めるのであれば選択制を望む方も少なくないでしょう。
しかし、住んでいる家、周辺地域、交通、学校等様々な要素からどちらが望ましいか決めるべきなので、安易に人気のある学校を選択するという考えは避けたいところです。
家庭にとって、子どもにとって学区制度と学校選択制どちらが適切なのか、上記のことなどを踏まえてもう一度考えてみて下さい。
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